ネットオークションやフリマアプリは、今や誰もが使っている便利なサービスですね。『ヤフオク!』や『メルカリ』等、サービスサイトやアプリの種類もどんどん増えています。手元にあるスマホでサッと出品できるという手軽さも魅力です。「家にある着ない着物、ネットオークションで売れるのかな…」「フリマアプリで着物の処分をしたい」と思っている人も多いのではないでしょうか? でも着物の場合、ネットオークションやフリマアプリの利用にはメリットだけでなくデメリットもあるんです。
高額で売れるかも?着物をネットオークションで売るメリット
着物買取業者を使わず、ネットオークションやフリマアプリを使う--そのメリットは一体どんなところにあるんでしょうか?
会員登録無料、出品無料サイトも
ネットオークションやフリマアプリは、その多くが登録料を無料としています。会員登録をするだけならば、無料でサービスをスタートできるというわけです。(ヤフオク!でブラウザから出品をする場合等には、有料サービスである、Yahoo!プレミアム会員に登録する必要があります。)
また最近では、出品料を無料としたり、手数料を大幅に抑えるフリマアプリ等も登場するようになりました。実際にフリーマーケットに参加したりするよりも、グッと気軽に物品の売買ができるのがネットオークション・フリマアプリの魅力というわけです。
最安値を自分で決められる
ネットオークションでは、最安値(スタート価格)を自分で決めることができます。またフリマアプリの場合には、落札者達が入札をすることは基本的に無いので、売値は自分で決めることができます。いずれにしても「この価格以下だったら売りたくない!」というような価格でイヤイヤ売る…なんて必要はありません。
「美品だから、ちょっと高値にしたいな」といった希望を入れた価格設定にできるというわけです。業者さんに買取価格を決められてしまう場合とは、ここが大きく違う点ですね。
思わぬ高額落札になることも
ネットオークションでは、各ユーザー(落札者)達が希望買取価格を入札していきます。高い入札をした人が落札できる仕組みですから、人気製品の場合にはどんどん価格が上昇していくことも。思いもよらない超高額落札!といったケースは珍しくありません。
これは着物に限った話ではありませんが、以下のような製品は特に高額落札になりやすい傾向があります。
・傷や傷みの無いもの
・プレミアの付いたもの(作家製品等)
・証紙・証明書のあるもの
・現在人気のある柄行き(着物の場合、大正レトロ、古典柄等)
「1,000円程度でも売れればいいか」と思って出した出品が、数万円~数十万円といったお小遣い稼ぎになることもあるんです。
訳あり商品も売れる
リサイクルショップ等の場合、傷やシミがある着物等は買取を断られてしまうことが多々あります。でも「ネットオークション」や「フリマアプリ」なら大丈夫!「難あり商品」として傷があること・シミがあること等をきちんと公開すれば、堂々と売ることが可能です。「傷ありでも良い、シミありでも良い」という人が居れば、出品したものを買って貰えます。
もちろん美品に比べると落札価格は安くなりますが、モノによっては「傷ありでも高額落札」なんてことも。「捨ててしまうのはしのびない」「誰かに安くてもいいから買ってもらえないかな?」といった時にも、ネットオークションやフリマアプリは活躍してくれるんです。
手間が大変?着物をネットオークションで売るデメリット
次に、着物をネットオークションやフリマアプリで売るデメリットを見てみましょう。
実はネットオークションを着物で売る場合、メリットよりもデメリットや注意すべき点の方が種類が多いんです。
相場を調べる手間がかかる
「あんまり儲からなくてもいいから、とにかく着物が売れればいい」という人であれば、相場を調べる必要はありません。でも「せっかく着物を売るなら、できるだけ高く買ってほしいな」という人が多いですよね?ネットオークションを使う場合、高く買って欲しいならまず「相場」を調べることが大切です。
落札希望価格をあまりにも低く設定しすぎると、安く買われてソンをしてしまうことになります。かと言って、相場を調べずにとにかく強気な希望価格設定をしてしまうと、「ちょっと高すぎる」と思われて、誰からも落札されない…なんて可能性もあるわけです。あらかじめオークション内を見て回って、同じような素材や作りの製品の相場を調べておく必要が出てきます。
写真撮影・商品説明の手間がかかる
ネットオークションやフリマアプリでは、落札者側が手にとって商品を確かめることができません。そのため落札者・購入者側の人達は、たくさんの商品説明を求めます。特に着物の場合、洋服のブランド品と違って「店舗に同じものがある」「雑誌に同じものが売られていた」ということはほぼ無いですよね。そのため
製品説明や画像が不足している場合、「どんな製品なのかがよくわからない!」ということで、なかなか落札されない可能性も高いんです。
【オークションの着物出品に必要な情報例】
・着物の種類(留袖、訪問着、付下げ等)
・素材(正絹、ウォッシャブルウール等)
・作家製品の場合は作家名
・呉服店の店名がある場合には呉服店名
・サイズ(身丈・裄丈等、和装での寸法で測定すること)
・購入年
・着用回数、着用シーン
・現在の状態(シミ、傷み、シワ等がある場合にはできるだけ細かく説明する)
・色味が画像とやや異なる場合、その点もできるだけ細かく説明
・付属品の有無
・正面から撮影した画像(明るい場所でのもの)
・背面から撮影した画像
・柄行がよく見える画像
・着用した状態がわかる画像(あれば)
・陽にあたった状態と、暗い場所での色の違いがわかる画像
・傷・シミがある場合、その部分のアップ
・証紙・証明書の画像
一つの商品に対して、最低でも上記のような情報は必要になります。特に画像の美しさは、落札価格を決める大きな要素です。基本的には明るい場所で、和装ハンガーにかけるか綺麗に広げた状態で撮影をします。薄暗い場所であったり、シワがある状態、柄がよく見えないような画像ではなかなか落札はされません。
採寸・画像の撮影・商品説明を書くといった手間は、一つの商品に対して最低でも30分~1時間程度は必要になります。
発送の手間がかかる
着物が落札されたら、発送は速やかに行わなくてはなりません。落札されてからのんびり発送準備を始める…というのではおそすぎ! 出品をする前に発送準備までしておいて、落札されたら即座に発送手続きを取らないと、出品者から「この人は遅い」と思われる可能性が高いです。
ところが着物の発送準備には、意外と手間とお金がかかります。まず必要なのがダンボール箱。着物に不要なシワ等がつくのを防ぐため、段ボール箱は「着物がたたまれた状態で、まっ平らに居れられる大きさ」のものが必要です。
たたんである着物を更に二つ折りにするといった行為はNG。型崩れやシワを作り、トラブルの原因となります。
通常使っている60センチ前後の段ボール箱では、着物は平らに入りません。「着物を収納する段ボール(和装箱、和装段ボールケース、衣装箱)」等を事前に用意しておいた方が良いでしょう。箱の価格は、バラ売りの場合だと400円~500円程度かかることがあります。
出品手数料が取られる
ほとんどのネットオークション・フリマアプリでは、落札金額(販売金額)に対して「出品手数料」を徴収します。手数料の相場は、8%~10%といったところです。
【例】手数料10%のネットオークションの場合
最終落札金額→12,000円
出品手数料→1,200円(12,000円に対しての10%)
手元に入る金額→10,800円
最終落札金額→5,000円
出品手数料→500円
手元に入る金額→4,500円
最終落札金額→1,000円
出品手数料→100円
手元に入る金額→900円
※その他、振込手数料等が徴収される場合があります。
「1万円で売れた!」と喜んでいたら、手元に来るのは9,000円…というのはちょっとガッカリしますね。上記のような「手数料」が引かれることをあらかじめ考えて、希望落札価格や販売価格を決めましょう。
「評価」が高くないと入札が入りにくい
ネットオークションやフリマアプリには、ユーザーに対する「評価」の機能があります。1回の取引毎に出品者・落札者が相手に対して評価を付けて、その評価数や星の数等がユーザーの「信頼の証」となるわけです。
ネットオークションやフリマアプリで物を買う時のことを考えてみましょう。悪徳な業者だったり、ニセモノを売る人だったら困りますよね。でも評価数が100以上もあり、5つ星評価で星4.9、といった人だったら、「この人なら大丈夫だろう」と取引をする気になるはず。反対に評価数がゼロ、まったく取引実績が無い…という人だったらどうでしょう。信頼する証が無いので、不安になる人が多いはずです。
「これからネットオークション・フリマアプリを始める」という人の場合、サービス内での評価がまったくありません。そのため周囲からは警戒されますし、落札が入りにくい・売れにくいということが多いです。
これを解決するには、手はひとつしかありません。オークション内で何かをいくつか買って、評価数を増やしておくことです。この場合「出品実績」にはなりませんが、「購買をした実績」ができます。「オークションできちんと取引ができる人だ」と判断されやすくなるので、落札されることも増えるでしょう。
落札されなくても月額料・出品料がかかることがある
手数料発生のシステムは、ネットオークション・フリマアプリによって異なります。ネットオークションによっては、出品時に一定の手数料が取られることもあります。つまり「落札しようがしまいが、一定のお金がかかる」というケースもあるわけです。
何十着もの着物を一点ずつオークションに出品した場合、全部の着物が一気に売れるということはほとんどありません。下手すると何ヶ月間はオークションを利用しながら、売れるのを待つ…ということもあります。月額料・出品料等を合わせると、結局黒字があまり無かったというケースも少なくないのです。
個人間のトラブルが起きやすい
ネットオークション・フリマアプリの最も大きなデメリットが、個人間のトラブルの多さです。「ヤフオク トラブル」「メルカリ トラブル」等で検索をかけてみると、トラブルの事例がズラリと並びます。今回は着物の取引に起こりやすいトラブルについて、代表的なところを紹介します。
規定のお金を払わない落札者が居る(落札後の値引き要請等)
最近とても増えているのが、落札者側の責任によるトラブルです。
・落札後の取引連絡中に、「送料を無料にして欲しい」等の契約前と異なる条件を出してくる
・落札後の取引連絡中に、「やはり価格を下げて欲しい」と値引き交渉をしてくる 等
これらはいずれもルール違反です。あきらかに違反が見られる場合にはオークション運営側に通報する等して、取引の中止を行うこともできます。しかしいきなり運営側に任せることはできず、出品者側がきちんと断る、その上で再度支払いを依頼する…といった対応をしなくてはならないケースがほとんど。オークションのシステムをよく調べて、悪質な人(マイナス評価のユーザー等)が入札できないようにするといった対策を取っておくことをオススメします。
出品者の説明不足によるトラブル
出品者側に悪意が無くても、説明不足・確認不足等によってトラブルとなることもあります。
・「美品」と書いてあったのに傷がある
・「1回しか着ていない」という製品なのに型崩れが酷い
・画像と実際の製品の色が大きく異なる
・「未着用で美品」と書いてあったのにシミがある
・「去年買った」という製品なのにカビ臭い 等
特に気をつけたいのが、留袖・振袖・訪問着等のフォーマルな着物です。これらの礼装着物に対しては、ほんの少しでも傷、汚れ、傷み、変色等があることを多くの人が嫌います。例え1mmの汚れやキズであっても、シミがあれば「傷もの」なんです。ざっくりとしか確認を行わなかったことで、落札者側から「傷のある品物だった」と評価を受けるといったケースは非常に多く見られます。
送付の準備不足によるトラブル
着物の場合、畳み方・送付の方法等によるトラブルも目立ちます。
・送付をする際の梱包材等が不足していて、寄り・シワができていた 等
落札者側は基本的に、「届いたらすぐに着られるような状態」を求めています。着物はクリーニング代も結構高いですし、自宅でアイロンをかけられないものも多々ありますから、シワがある状態だととても困るんですね。そのため「箱の中で着物が寄っていてシワクチャ!」とか「畳み方がひどくて、襟元がよれてる」といったケースはトラブルの元。これをやられると、落札者側は数千円以上のソンをすることになりますので、多くの場合出品者側にはマイナス評価が付きます。
上記のようなトラブルが起きると、落札者・出品者とも嫌な思いをしますから、大抵の場合は悪い評価を付けられることになります。落札者側はその評価を見て入札を決めますから、悪評価が付くとオークションで売れない!なんてことも。特に「出品者側の製品の確認不足」「着物の管理不足によるカビ・シミ等があった」といった評価説明があると、一気に着物が売れなくなるのでご注意ください。
おわりに
ネットオークション・フリマアプリで着物を売るメリット・デメリットはいかがでしたか?カンタンにまとめてみると、ネットオークションに向いている人・いない人は以下のように分けられます。
【ネットオークション・フリマアプリに向いている人】
・処分したい着物の点数が比較的少ない
・一日の中で自由になる時間が比較的多い
・写真撮影や製品説明を考える時間が苦にならない
・着物に対してある程度の知識がある
・着物の管理をきちんとしてきたと思う
・ネットオークション・フリマアプリを既に利用しておりシステムをわかっている
・着物がすぐに現金化しなくても良い
【ネットオークション・フリマアプリに向いていない人】
・処分したい着物がたくさんある
・落札者との連絡や発送をするための時間がない
・写真撮影や商品説明等をじっくり行うのが面倒
・着物の種類や柄、素材等がまったくわからない
・着物の管理方法を知らない、洋服と同じようにしてきた
・ネットオークションやフリマアプリを使ったことがまったくない
・できるだけ早く着物を現金化したい