着物文化が見直されたことで、最近では結婚式等の冠婚葬祭や入学式・卒業式等の式典だけでなく、観劇やデートにもお着物を楽しむ方が増えましたね。でも「着物を着たいけど、今は寒いから…」と、冬のお出かけに着物を着るのを諦めてしまう方も少なくないようです。せっかくの晴れの日やお正月等のイベント、やっぱり着物のおしゃれを楽しみたい…と思いませんか?ちょっとした工夫をするだけでも、着物での冬場のお出かけはグッと暖かく、快適になるんですよ。
【着物の防寒】
見えないところでしっかり防寒!
見た目も重要だけど
冷えは大敵です!!pic.twitter.com/pBhisCGN3P— みか@女子力アップへの道 (@c22krIL2SmfVaSh) 2018年3月18日
この記事の目次
1.パーティーや街着なら、着物の「生地」から防寒対策。
着物の防寒対策というと、インナーやアウター等、着物以外のアイテムを思い浮かべる人が多いはず。でも防寒対策の基礎とも言えるのが、着物自体の選び方なんです。「着物はどれを選んでも寒いもの」と思っていませんか?実は着物にも洋服と同じで「冬用の着物」があるんですよ。
冠婚葬祭向けの礼服(留袖・喪服)等の場合には、着物の素材は「正絹(シルク)」であることがほとんど。でも気軽な「小紋(こもん)」やパーティー用等のカジュアルな付下げ(つけさげ)等の場合には、絹だけでなく様々な素材の着物が販売されています。
- ポリエステル
- ウール
- ウールシルク 等
ウールの着物で冬でもポカポカ!
特に冬場におすすめなのが、ウール入り・ウール混紡の着物です。ウール(羊毛)が入った着物は、冬用のセーター等と同じで保温性に富んでいます。デートやショッピング等の街へのお出かけであれば、カジュアルなウール小紋等を着てみてはいかがでしょうか?
ウールシルクならパーティーにも。
ウールとシルクを混紡した「ウールシルク」は、一見すると絹のような光沢感があり、「普段着」よりもちょっとおめかしした着物(付下げ・訪問着等)にも使われます。気軽なパーティーといった内々での集まりや観劇ならば、正絹ではなくウールシルクの着物でもOK。冬のちょっとしたお出かけのために、一着用意しておくと便利です。
2.暖かなインナーで寒さを防止!
着物を着た時の体感温度を大きく変えてくれるのが、着物の中に着るインナー類の存在です。
カジュアル着物なら「洋服用」のあったかインナーでもOK!
小紋や紬といったカジュアルな着物をおしゃれ着として楽しむ時には、洋服用のあたたかなインナーを中に着込んでも大丈夫。ただ着物は構造的に「インナーが見えやすい」という点があるので、インナー選びの際には以下の点に気をつけましょう。
1)襟ぐりが広く開いているものを選ぶ
特に気をつけたいのが後ろ襟側の開き方。着物は後ろ襟をやや抜いて着るため、首の後ろ側が詰まった形だと頭を下げた時等にインナーがチラ見えしてしまうことがあります。前側は胸元近くまで、後ろ側も肩甲骨が見えるくらい襟が開いた形のものを選びましょう。
2)袖は五分丈よりも短め
着物は袖口が広いため、ちょっとした動きでも手首より上側が見えます。「温かいから」と長袖のインナーを着込んでしまうと、「中に着てる!」とバレバレ…ということに。袖は五分丈より短く、肘が隠れるか隠れないか程度のものの方が安心です。
3)長襦袢の色に合わせる
女性用の着物には脇に「身八つ口」という縫い合わせの無い部分があります。身八つ口からインナーが見えるほど激しく腕を動かす…ということはあまり無いのですが、着物や長襦袢とあまりにも違う色味が身八つ口から見えたると、非常に目立つことも。インナーの色味を長襦袢の色に合わせておくと安心ですね。
礼装用の着物には、暖かな和装肌着を。
留袖や振袖・訪問着等のフォーマルな着物を着る場合には、上記のような「洋服用」のインナーを使うのはあまりおすすめできません。万一チラッとでもインナーが見えると一気に「カジュアルな着方」に見えてしまいますし、インナー素材によっては着崩れが起こる可能性もあるためです。大切な日に着る着物には、暖かな素材の和装インナーを用意しておくと安心ですよ。
<<和装用のインナー類>>
- 肌着
- 下履き
- 裾よけ
- 肌襦袢 等
上記のような和装インナーでも、現在では二重ガーゼやソフトサーモ糸等を使用した防寒素材のものが多数登場しています。冬の結婚式やお葬式、入学式等の式典等には、このような防寒下着を準備しておくと良いでしょう。
3.羽織や道行・和装コートで、着物独特のオシャレを楽んで。
洋服でジャケットやコートを着るように、着物にも様々なアウターがあります。外気温やシーンに合わせて、アウター選びも楽しみたいですね。
道行(みちゆき)
道行とは、昔からある着物の外出用のコートのこと。襟元が四角く開き、額のような仕立てになっているのが特徴です。袷(あわせ)のものと単(ひとえ)のものがありますが、真冬の防寒には袷の方が良いでしょう。「道行衿(みちゆきえり)」は礼装用の襟の形で、この形の道行は留袖等にも合わせられます。へちま衿等はおしゃれ着向き・普段着向きですので、礼装用には不向きです。いずれにしても道行はあくまでも「外出用」ですので、室内に入る際には必ず脱ぐようにします。
羽織(はおり)
道行が「洋服で言うコート」であるならば、羽織は「ジャケット」のようなもの。そのため羽織は室内でも着用することができます。(ただしお茶会の席では着用できません。)黒地に家紋が入った「黒紋付羽織」を羽織ると小紋のようなカジュアル着物も「略礼装」として式典等に着用することがOKになります。また絵羽柄の華やかな羽織は改まった場所にも着て行ける礼装用の羽織りです。カジュアルに着用される場合には、ウールの羽織も暖かく便利。「柄+柄」という着方は洋服ですとNGですが、和装であれば粋な着方としても楽しめます。街着としてお着物を着る時には、柄入り羽織りで和装ならではのオシャレを楽しむのも素敵です。
外套(和装コート)
「寒くて寒くて、道行や羽織では耐えられなそう…」という時には、より暖かな和装コートを合わせてみましょう。和装コートは洋服用のコートと同じで、メルトンやウールといったしっかりとした素材で作られています。袖まわりがゆったり作られているので、着物でもスムーズに着脱できるのが特徴。また背中周辺にもゆとりを持って作られており、帯を潰さず見た目にもゴロゴロとして見えないのが嬉しいポイントです。ただ和装コートは完全なアウターなので、羽織のように「着たまま建物内に入る」というのはNG。道行より重さがあるので、コートを入れられる大きめのサブバッグ等を用意しておくことをおすすめします。
ポンチョ・ケープ
袖がないコートであるポンチョやケープは、着物の袖の長さを気にせずに合わせられるのが良いところ。柄や素材・雰囲気が合うものであれば、洋服用のポンチョやケープもコーディネートして構いません。ただし和装用にしても洋装用にしても、ポンチョやケープは「完全にカジュアル向け」のアウターです。振袖・訪問着・留袖といったフォーマル着物には合わせられませんし、式典等の改まった場には着用NGなので気をつけましょう。
ショール・ストール
ショールやストールは、柄・素材が合うものなら洋服用のものでもOK。カシミヤ等のシンプルな無地ストールであれば、訪問着等にも合わせられます。なお防寒のためのショール・ストールは、できるだけ大きめのサイズを選んだ方が安心です。首周り(特にうなじ周辺)だけでなく身八つ口(脇周辺)をすっぽりとカバーできた方が、防寒性が大きく高まります。
なお結婚式にお着物を着用される場合には、ファー素材のショールやストールはNG!お祝いごとである結婚式の際には、殺生(せっしょう・動物を殺すこと)を意識させる毛皮(フェイクファー素材含む)を避けることがマナーとされています。成人式やお正月の場合等とはルールが異なりますので、気をつけましょう。
4.足が温かいことが大切!足袋や草履にも工夫を。
着物に合わせる草履(ぞうり)は靴のようには足をカバーしてくれないので、どうしても足先が冷えてしまいがち。また裾から冷気が入り込むため、スネやふくらはぎ等もスースーとしてしまうのが困りますね。足をできるだけしっかりと防寒することで、体温が下がるのを防止しましょう。
和装用ストッキング・和装タイツが大活躍!
足首~膝下の寒さ対策となってくれるのが、膝下タイプの和装ストッキング。かかとにかけるタイプのものが多く、足袋を履いてもズレないのが特徴です。和装専用のストッキングには静電気防止対策等が施されているものが多く、素材の力で着物の脚さばきもキレイに見せてくれます。
また「もっと温かいものが良い」という方は、通常のパンティストッキングのようにすっぽりと履ける「和装タイツ」を選ぶのも手です。和装用のタイツには股部分に開きがあるので、お手洗いに行く時にもまごつくことがありません。現在では和装ストッキングも和装タイツもネットで気軽に購入できるようになりました。価格帯も手頃なので、一本持っていると安心です。
あたたか素材の足袋で、足先までほっこりと。
足袋(たび)にはカジュアル向けの色柄ものと、礼装用の白地のものがあります。現在ではどちらも「あたたか素材」のものが登場しています。
◯カジュアルな冬用足袋で、斬新なコーディネートを楽しんで。
小紋等に合わせるカジュアル向けの足袋には、ウール素材やフリース素材等、暖かで様々なデザイン・柄のものが登場しています。街着として着る着物では柄物・色物を使用してOKなので、和装ならではの大胆な色合わせを楽しむのも素敵ですよ。
◯礼装用には「裏起毛」の暖かな白足袋を。
式典や冠婚葬祭等のフォーマルシーンには、柄足袋・色足袋等はNG。この場合には、外側は通常の白足袋に見えて、裏地にはネル・二重ネル等の裏起毛素材が使われた足袋を選びましょう。現在では表側にも撥水加工(ウォータープルーフ加工)を施した白足袋も登場しており、更に防寒性が高められています。
足袋インナーを重ねて、更に暖かく。
カジュアルに着物を着る場合には、冬用の厚手の足袋の下に「足袋ソックス(タビックス)」を重ねてしまうのも手。ごく薄手のタビックスであれば、カジュアル足袋の下に履いてもそこまで着ぶくれせず、暖かく過ごすことができます。
ただ礼装用の白足袋の場合ですと、通常のタビックスでは見た目がキレイに見えないことが多いもの。この時には、専用の「足袋インナー」がおすすめです。京都の舞妓さんたちの要望によって生まれた「足袋インナー」はごく薄手で伸縮性に優れているのがポイント。更に東レ開発の「ソフトサーモ素材」が使われているため、薄くてもとてもあたたかいのです。
寒さが心配な日には「雨草履」を履いて。
雨草履(あめぞうり)とは、つま先部分にビニールのフードが付いた草履のこと。しっかりしたビニールカバーがついているため、つま先に当たる風を防ぎ、足先の冷えから守ってくれます。お天気が
崩れそうな日にはもちろんですが、風が強い日、七五三等で屋外に出ることが多い…という日にも雨草履は活躍してくれますよ。
◯「雨の日カバー」をすれば、いつもの草履も雨草履に!
「わざわざ雨草履を買うのはちょっと…」という人におすすめなのが、草履用の雨の日カバー(草履カバー・爪かけ)。こちらはカバー部分のみの販売となっているので、800円~2,000円程度という気軽な価格で販売されています。携帯用のポーチ等に入っているものもありますから、「もしも」の時のためにひとつバッグに入れておいても良いですね。なお着脱可能な雨の日カバーは、屋内に入った時には外してサブバッグ等に入れることをおすすめします。
5.袖から入ってくる冷気は、手袋で防寒を。
身八つ口・裾に続いて、冷気が入ってくるのが「袖(そで)」。着物は袖口が大きく開いているので、どうしても手先が冷えてしまいがちです。和装に合う手袋で、しっかり手元も守りたいですね。
◯ロングの手袋で、肘から下もしっかりガード。
防寒性に富んでいるのが、肘まですっぽりと隠してくれるロングの手袋。かつては「絹手袋でないとNG」と言われていましたが、最近ではカシミヤ素材等でも装飾が少なくシンプルなデザインのものであれば、訪問着等に合わせる方が増えています。ただし手袋はコート類と同じく「外向け」のものとされるので、式典の最中等に手袋をはめっぱなし…というのはNG!暖かさだけでなく、着脱がしやすいものを選びたいですね。