着物産地

葛布(くずふ)

葛布とは?特徴や歴史、買取業者に売るポイントも徹底解説

葛布(くずふ)という名前の織物を見たことがありますか?葛布はとても昔から日本で作られてきた歴史のある織物で、かつては平安貴族のお衣装等にも用いられてきました。現代では生産量が激減していますが、伝統的な技法は受け継がれ、葛布の和装小物類や帯等が流通しています。

お着物が好きな方、着物通な方であれば、箪笥に葛布の帯が眠っている…といったこともあるかもしれません。今回はこの「葛布」について、織物の歴史や、また使わない葛布アイテムを手放す場合のポイント等をご紹介していきます。

葛布とはどんな織物?

クズ
「葛布」とは、「葛」という名前がつくとおりマメ科クズ属のつる性多年草「クズ」の繊維から作られた織物のことを意味します。また、経糸に絹・麻等を使って、緯糸に葛の糸を使って織ったものについても「葛布」と呼称します。

「クズ」は古くから日本で自生していた植物で、万葉集の時代から秋の七草に入れられたり、薬として用いられるほど日本人の生活に密着していました。

「葛」と言われて「葛きり(くずきり)」「葛湯(くずゆ)」等を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。国産葛粉の生産量も今では激減しましたが、現在でもどちらかというと葛については「食べる」というイメージを持つ方の方が多い様子。しかし昔の日本では、葛を食べるだけでなく、繊維から糸を作り上げ、織り上げて布を作り着ることは当たり前だったのです。

植物の天然繊維で作られた「葛布」には、優しく素朴で涼しげな風合いがあり、また独特のキラキラとした光沢があるのが魅力です。わずかに受け継がれた葛布の技術によって現在も帯や和装バッグ等の製品が作られており、和装をお好みになる方だけでなく、ナチュラルテイストな雑貨を好む人達からも人気を得ています。

帯はどちらかというと夏向きの製品と捉えられることが多い傾向ですが、近年では季節を問わずに使える色味の製品、カジュアルだけではなく幅広いシーンで使用できる帯等も発表されており、洒落た帯を好む着物通達の注目を浴びています。

ちなみに「葛布」の呼び方は「くずふ」または「くずぬの」。また地域によっては「かっぷ」と呼ばれる時代もありました。

葛布の歴史

葛布の歴史は驚くほど古く、なんと古墳時代にはすでに葛による織物が作られていたことがわかっています。古墳から発掘した鏡に葛布の繊維が付着していたのです。当時の鏡は宝物ですから、それを保護する高級な布として葛布が扱われていたとも考えられます。

平安時代頃には葛布の生産方法・染色技術等が確立し、貴族達が蹴鞠をする時等に着る日常着・遊び着等にも葛布が使われてきました。また平家物語にも葛布で作った袴が登場しており、生活に密着した繊維であったことが伺えます。

さて江戸時代までは武家・公家等が用いる衣装として需要があった「葛布」ですが、着物を着る人が減ったことでアパレル用繊維としての需要は低下。そのため明治以降は、葛布はふすま張りや壁紙用、また装本用等の布等として使われることが増えていったのです。

海外輸出産業のひとつとしても注目されていた葛布ですが、この頃からアジアでの葛布生産が活発に行われるようになり、円安ドル高等の影響も受けて日本での葛布生産量は激減。昭和時代までに多くの企業が葛布の生産を停止してしまいました。

現在では、静岡県掛川市の「掛川手織り葛布」や、静岡県島田市の「大井川葛布」等が日本で生産される数少ない葛布の生産元となっています。

葛布の特徴

品のある光沢感

天然の葛から織り上げられた葛布には、品のある自然な光沢感が見られます。絹や麻とはまた一味異なる落ち着きのある光沢感は、大人の装いにもピッタリです。

水に強い

道中合羽(どうちゅうがっぱ)葛布は武家社会では袴地や道中合羽等に使われてきた繊維です。道中合羽(どうちゅうがっぱ)とは、江戸時代頃まで旅人達が使ってきたレインコートのようなもの。スポーツウェアやアウトドア用ウェア向けの布として葛布は扱われてきたのですね。

葛布の丈夫さ、そして水への強さという特性があったことが、このような用途に用いられた主な理由と考えられます。現在でも葛布で作られた和装バッグや財布等はとても丈夫で、美しい状態がながもちするという評価を得ています。

軽く使いやすい

葛布のもうひとつの魅力が「軽さ」です。織り目がとても細やかなのに薄くて軽い--このような特性があることから、葛布は「のれん」や「日傘(パラソル)」等、涼感を大切にするアイテムにも用いられています。

布自体が軽いということは、例えば葛布で作った帯等も軽やかで着やすいということ。葛布の生産元である地元・静岡ではお茶会等にも葛布の帯を締める方が多いそうですが、見た目に美しいというだけでなくやはり「軽くて使いやすい」という点も着用のひとつの理由となっているようです。

葛布を手放す場合のポイント

上記のように様々な魅力がある「葛布」。しかし中には「購入したけれど、なかなか帯を締める機会が無い」「祖母が葛布の小物をたくさん持っていたけれど、受け継ぐ人がいない」といった理由で、葛布を家に眠らせたままになっているケースも見られるようです。

葛布の帯や小物類を手放す場合、どのようなお店や業者に売ればよいのでしょうか。知っておきたいポイントをまとめてみました。

和装小物の買取り取り扱いがある業者を

葛布の帯だけでなく、和装バッグ類等も一緒に売りたい…このような場合には、中古着物買取業者の「買取範囲」「買取可能ジャンル」をよく確認しておきましょう。

着物や帯を買取る業者だからといって、和装関連小物を一括で買い取るとは限りません。和装バッグや草履、その他帯留め等の和装小物類は買取NGということはよくあります。

特に宅配型の買取業者には気をつけましょう。万一買取NG品を査定のために業者に送ってしまうと、買取不可の商品を自宅返送してもらうには別途返送料金が発生してしまいます。

リサイクルショップはNG?

一般的なリサイクルショップ等の総合買取業者に葛布の帯やアイテム類を売るのはあまりおすすめできません。葛布は静岡県の伝統工芸品であり、着物好きの間では高い評価を得ている帯ですが、一般的な中古服店ではそのような呉服業界の知識を持つ査定スタッフが在籍していることは期待できません。

単なる民芸調のアイテムとして、二束三文の価格で買い叩かれてしまう恐れは十分にあります。

また一般的なリサイクルショップの場合、どちらかというとフォーマル向けに合わせやすい帯の方が需要があります。おしゃれ着やお茶会等向けである葛布を高価買取する店舗は少ないでしょう。

葛布の帯類等を高価買取してもらうのであれば、伝統工芸品で昔ながらの技術を受け継いだ「葛布」の価値をキチンと判断できる店を選ぶことが大切。着物鑑定士在籍の「着物専門買取業者」を選んだ方が安心です。

おわりに

葛布の特徴や歴史はいかがだったでしょうか。葛布は丈夫で色あせ等にも比較的強い布ですが、天然繊維・天然染色ですから、保管をキチンとしていないと変色等が起きる可能性はあります。

一度変色等が起きてしまったアイテムは、中古買取価格も下がってしまいがちです。眠らせている葛布のアイテムがあったら、状態の良いうちに手放すか、保管・管理中のメンテナンスをしっかりと行うようにしましょう。

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