お手入れハウツー

着物カビ

眠っていた着物にカビが生えた!応急処置と正しい対処法

「着物を出してみたら、カビが生えていた」「着物がなんだかカビ臭い…」押入れやクローゼット等で長く眠っていた着物には、このような「カビ」によるトラブルがよく起こりがちです。着物にカビが生えているのを見つけたら、どのようにカビの応急処置をすれば良いのでしょうか?

今回は着物のカビに対する応急処置法や、その後の正しい対処法、また昔の着物を買取業者に出す場合のポイント等について詳しく解説をしていきます。

1.着物の状態をよくチェックしましょう

着物カビ
眠っていた着物を出した時に「何か変」「カビかも?」と感じたら、まずは着物を明るい場所で広げて、全体をよくチェックしましょう。発見した場所以外にも、カビの被害が広がっていることがあります。

【カビによる被害の例】
● カビ臭い「匂い」がする→匂いはカビの種類により異なりますが、おおむね「ホコリ臭い匂い」「何かが腐っている匂い」として例えられます。芳香剤とは異なる異臭がしたら、カビによる匂いである可能性が高いです。
● 黒色・青色・緑色の小さな斑点がある→「黒カビ」もしくは「青カビ」の繁殖によって、小さなシミのような斑点ができた状態です。
● 黄色・オレンジ色・茶色の小さな斑点がある→カビが生えた部分が変色した状態です。
● 白っぽい斑点がある、着物の表面にフワフワとしたものが付いている→「白カビ」が繁殖している状態です。

【チェックするポイント】
● 着物の裏面全体:着用時の「汗」の成分が溜まりやすい裏地には、表面よりもカビの繁殖・変色が進みやすい傾向があります。
● 脇・ウエスト・背中部:着用時にもっとも汗がたまりやすく、カビ以外の黄変(成分の酸化による変色)も起こりやすい箇所です。
● 肘の裏・ヒザの裏:特に袖(そで)の裏側である肘があたる部分は汚れがたまりやすく、隠れたカビの繁殖場所となりやすいです。
● 胸元の下部分:食事による食べこぼし・ハネ等の油分汚れが残りやすく、カビ繁殖が起きやすい箇所です。

2.着物の「表面のカビ」を取りましょう

着物に生えているカビが「白カビ」であり、なおかつ被害が初期型で「表面にフワフワと白いものが付いている」という場合には、応急処置として表面のカビを取る作業を行います。

【準備するもの】
・古い布(ベロア等の起毛した繊維だと理想的)
・マスク(作業用の吸引防止)
・着物専用ハンガー(和装用ハンガー)

※作業中には、すぐに水洗いができる汚れても良い服装をしましょう。
※着物専用ハンガーが無い場合には、物干し竿等で代用します。

【着物の応急処置の手順】
1)作業に入る前に、カビを吸い込まないようにマスクを付けます。
2)作業は原則として屋外で行います。ベランダ・庭等に和装ハンガーにかけた着物を干します。雨の日とその前後は避け、湿度が低い日を選びましょう。
3)雨の日続きで屋外作業ができない、ベランダでは着物が干しにくい場合には、屋内の風通しの良い場所を選びます。この場合には窓を3箇所以上あけて換気をし、着物の下に新聞紙等を敷いておきます。
4)古い布で着物を軽く払い、表面のワタボコリのような白カビを落としていきます。絶対に強くこすらず、軽く叩くように落としていきましょう。
5)屋内作業の場合には、作業後に下に敷いておいた紙袋等をすぐに廃棄します。

※払う作業はできるだけ軽く行ってください。繊維の奥に白カビが押し込まれ、取れなくなることがあります。
※表面のワタボコリが取れた後に、繊維の奥にも「白い斑点(汚れ)」が見える場合には、それ以上無理に着物を払うのをやめましょう。
※濡れている布・タオル等で着物を拭くのは厳禁です。カビ菌にとって水分は繁殖のためのエサのようなもの。水分を吸うことで、カビの繁殖がさらに拡大してしまいます。

3.着物に付いた「カビの臭い」を取りましょう

「カビの繁殖は目には見えないけれど、なんだか着物がカビ臭い」「表面の白カビは取れたけど、匂いが気になる」という場合には、着物のカビ臭さを取る応急処置を行います。着物のお手入れである「陰干し(かげぼし)」を行うことで着物の匂いを飛ばし、カビ臭さを抑えましょう。

【準備するもの】
・着物専用ハンガー(和装ハンガー)

※着物専用ハンガーが無い場合には、物干し竿等で代用します。

『屋外で陰干しを行う場合』
1)庭もしくはベランダの、直射日光の当たらない場所に着物を干します。天候は晴れか曇りで、湿度の低い日を選びます。
2)日光が当たらないように適宜着物を移動させながら、3~4時間以上、半日程度は空気にさらします。
3)夕方以降は着物を取り込んでおきます。
4)翌日以降に再度着物を陰干しします。匂いが飛ぶまで繰り返します。

『屋内で陰干しを行う場合』
1)窓からの直射日光があたらない場所を選びます。
2)着物を和装ハンガーにかけて、鴨居等に吊るします。形を整えます。
3)窓を2箇所以上開けて、換気をし続けます。湿度が高い状態の場合には、エアコン(除湿)をかけ続けて湿度を下げます。
4)カビの匂いが飛ぶまで干します。

なお「カビ臭さ」が取れるまでの期間は、カビの繁殖状態によっても異なります。初期のカビで軽いものであれば3日~一週間程度で匂いが飛ぶこともありますが、状態が重い場合だと、一ヶ月以上の陰干しが必要となることもあります。

4.他の着物への「カビ移り」を防ぎましょう

着物を複数持っている場合や、帯等の小物と一緒に保管しているという場合、一着の着物に「カビの発生」「カビ臭さ」があると、その他の着物・小物にもカビ菌が移っている恐れがあります。

他の着物・小物へのカビ菌の繁殖を防ぐために、以下のような予防対策を取りましょう。

すべての着物・和装小物を虫干しする

カビの発生・カビ繁殖を防ぐには、カビ菌の好物である「水分」をできるだけ断ち、着物を乾燥させることが大切です。湿度の高い日本では、押入れ・クローゼットの中にも湿気がこもり、これがカビの繁殖を増やす要因となっています。

すべての着物・和装小物類(腰紐や帯板等も)を虫干し(陰干し)して、カビ菌の繁殖を防ぎましょう。今後も着物の長期保管をする場合、カビ予防のための「虫干し(陰干し)」は、年に3回程度、気候の良い時期を狙って定期的に行います。

除湿剤を入れる(取り替える)

着物等の衣類の虫害を防ぐ「防虫剤」だけでは、湿気を防ぐことはできません。虫干し後の保管のときには専用の「除湿剤(乾燥剤・除湿シート)」を入れて、湿気をできるだけ取りましょう。

【除湿剤・乾燥剤の種類】
1)押入れ全体を除湿するもの
2)引き出し・衣装箱に入れて置けるタイプのもの
3)タトウ紙(文庫紙)の中に、着物と一緒に入れて置けるタイプのもの

上記の3種類を用意して、除湿を徹底的に行うのが理想的です。また乾燥剤(除湿剤)には使用期限がありますので、定期的に取り替えるようにしましょう。

タトウ紙・文庫紙を取り替える

タトウ紙
文庫紙

「タトウ紙(文庫紙)」とは、着物を一枚一枚包んでいる保管用の包装紙のことを指します。この紙は昔ながらの「和紙」で作られており、余分な湿気を吸収して着物をカビから守る役割を果たしています。しかしタトウ紙が古くなると除湿作用が十分に働かなくなり、着物の中に湿気がこもりやすくなって、カビが発生しやすくなるのです。

「着物を購入してから一度もタトウ紙を取り替えていない」という場合には、除湿剤だけでなくタトウ紙も新しく交換することをおすすめします。タトウ紙は呉服店等の着物専門店の他、店舗によっては和装クリーニングの専門店で販売していることもあります。近年ではネット販売を行っている店舗も多いので、お近くでの購入が難しい場合には、ネットで手に入れるのも手です。

ただし「今後着物を手放す予定がある(着物買取業者等に売る)」という場合、古いタトウ紙を廃棄してしまうのはNG。タトウ紙に呉服店の名前等が入っている場合、それも有名呉服店での購入の証となります。古いタトウ紙はよく干してから、カビが移らないように別の場所に保管しておきましょう。

5.専門店に「カビ取り」を依頼しましょう

着物の表面に生えた「白カビ」は、「2」でご紹介したように意外とカンタンな方法で取り去ることができます。しかし自分での作業で取り去ることができるのは、衣類の「表面」のカビのみです。カビ菌は実は長い「根」を持っており、この根は繊維の奥にまで食い込んでいます。自宅でできる着物の応急処置では、着物の奥のカビ菌を根絶することはできません。

そのため定期的な虫干し等の対策を行わないと、着物には何度もカビが繰り返し生えてきてしまいます。カビ臭さについても同様です。陰干し・虫干しをすれば一時的に匂いは消えますが、長期保管をしていれば、再度カビの匂いが発生してしまうことになります。

また以下のような着物のカビの被害に対しては、自宅での応急処置を行うことができません。

【自宅では落とせないカビ汚れの例】
● 黒カビ・青カビによるシミ
● オレンジ色・茶褐色になった着物の変色
● 白カビによる白い斑点(繊維の奥に付いている汚れ)

着物に生えたカビを根絶したい場合や、上記のようなカビによるシミ・変色を取るには、「着物のクリーニング」を専門店に行う店舗や「悉皆屋(しっかいや)」等に相談をしましょう。

「着物丸洗い」ではカビは落とせない

一般的な着物クリーニングとして行われる「着物丸洗い(ドライクリーニング)」では、着物に生えているカビによるシミやカビ臭さ等は取ることができません。着物に生えたカビをキレイにするには、特殊な溶剤等を使った「カビ取り」等の作業が必要になります。

着物クリーニング店舗に依頼をする場合には、「丸洗い」だけでなく「シミ抜き」「カビ取り」等のメニューがきちんとある店舗を選ぶようにしましょう。

着物クリーニング「カビ取り」の料金・価格は?

着物クリーニング専門店における「カビ取り」の扱いはマチマチで、「シミ抜き」の一環としてカビ取りを行う店舗もあれば、丸洗いに追加する形でのみカビ取りを行う業者も見られます。

丸洗い等を含めた全行程を込みにした料金相場は、一着あたり9,000円前後~15,000円前後といったところです。料金は着物の種類によっても異なり、振袖・留袖・訪問着等の礼装用着物の方がやや高くなる傾向を見せています。

またカビ取りの料金価格はカビの生えている範囲・変色の有無等によっても変動することがあります。実際の作業に入る前に見積もりを出してくれる店舗を選ぶことをおすすめします。

「染め直し」「染色補正」が必要になる場合も

着物の地色の部分(柄の無い部分)だけでなく柄の部分にカビが大量に生えてしまっている…このような状態だと、カビを取るだけでは柄行の部分の変色が元に戻せず、着用するには難しい場合があります。

カビの発生量・発生した箇所等によっては、着物を染め直ししたり、柄を描き直したり、染色した部分を補正するような対処が必要となることも。万一の場合にこのような対処法も相談できる、専門的な知識を持った店舗を選ぶこと大切です。

6.着物を買取に出す場合には?

カビの生えた着物をキレイに再生させるには、上記のとおり、悉皆屋等の専門家の力を借りる必要があります。しかし今後着物を着る機会が一切無く、このまま着物を買取業者に売る予定…という場合には、カビの生えている着物にわざわざ手を入れないほうが良いこともあるんです。

これには以下の3つの理由が挙げられます。

1)汚れ有り・カビ有りでも買い取る着物業者が増えている
近年では、シミ等の汚れがあったり、カビが生えてしまっている着物でも「買取OK」としている着物買取業者が増えています。これは自社で着物クリーニングや着物補修等の専門家を抱える企業が増加しているため。「自社で着物を再生できるから、良い着物であれば状態が悪くても高く買取る!」というわけなんですね。

2)手間と料金が買取価格を上回る恐れがある
上記でご紹介したとおり、個人が着物のカビをすっかりキレイにするにはかなりの手間とお金がかかります。自己負担でカビ取りを行い、1枚あたりの着物買取価格が多少上がったとしても、クリーニング等にかかった料金の方が高く付いてしまう可能性も高いのです。

3)買取価格が下がってしまう恐れがある
着物の買取査定では、「補修歴」のチェックが行われることがほとんど。クリーニングや補修の内容によっては、「補修歴が多い」ということで査定額が下がってしまう恐れもあります。

カビの状態等によっては、無理に着物のカビを落とさず、そのまま査定を行った方がトクだったというケースは多々あります。

特に着物の扱いに慣れていない人や、和装ハンガー等の用意が無い人の場合、陰干し後に着物をたたむのも一苦労…というケースは多いもの。このような場合には、無理をせずにそのまま買取に出した方が良いでしょう。

おわりに

眠っていた着物にカビが生えてしまっていた場合の応急処置や対処法はいかがだったでしょうか?着物に生えたカビ菌は、着物の汚れの中でも一・二を争うガンコで厄介な存在。一日~二日といった短期間では匂いの対処もしきれないので、根気よく陰干しをすることが大切です。

放置しておくとカビ菌がどんどん広がってしまうので、早めに対処をするようにしましょう。

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