藍染(あいぞめ)は、様々な日本の染め物の中でも有名な染色法のひとつ。「藍染」という言葉を知らなくても、「ジーンズ」をお持ちの方は多いのではないでしょうか?実はあれも元々は「藍染」の一種なんですよ。また伝統工芸・有名作家品等にも、藍染着物・藍染め製品は多く見られます。ここでは藍染という染め方の歴史や、藍染着物を売る場合の注意点等について詳しく解説していきます。
この記事の目次
そもそも藍染とは何?
藍染とは、藍(アイ)という植物の成分を使った染色法、ならびにその染め方で作った着物等の製品のことを指します。「藍」よりも「インディゴ」と呼んだ方が、「知っている」という人が多いかもしれませんね。ただ西欧の「インディゴ」は天然ものがほとんど絶滅してしまっており、ジーンズ等の染め物では合成品が多く使われています。
日本の「藍染」では、「タデアイ(蓼藍)」という一年草を使うのが一般的です。藍染の染め物の色はまさに「藍色(あいいろ)」。深い紺色から柔らかな浅葱色(ライトブルー)まで、青の深みは製品によって異なりますが、いずれも日本らしい青の色合いが楽しめます。
藍染の歴史
藍染の技術が日本に入ってきたのは、およそ1800年~1500年前のこと。「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」には藍染を示す「青」の記述があり、2~3世紀には藍染製品があったことがわかります。奈良時代頃までには中国大陸から伝わってきた方法が採用されていたようですが、室町時代には現在に伝わる日本独特の染色方式が確立したようです。日本でも長い歴史のある染め方なのですね。
江戸時代の庶民に綿・麻の着物が好まれた結果、藍染はさらにメジャーな染め方となります。しかし明治に入り洋装文化が輸入されてからは藍染文化は一気に廃れてしまい、藍染の染色の元となる「藍屋」の数も激減してしまいました。
藍染の染め方
では藍染めはどのように染められているのでしょうか。細かな技法は染屋によっても異なりますが、ここではその一例を見てみましょう。
1)蓼藍等の植物を刻んで茎と葉に分ける
2)天日干しで乾燥させたあと、水を打って発酵させる
3)100日以上の時間をかけて世話をし、染料液である「すくも」が完成
4)すくもに灰汁・酒・ふすま・石炭等を加えて撹拌、さらに発酵させる
5)布地を漬け込む(柄行等のために絞りを行う)
6)絞って空気酸化をさせる。漬け込み→酸化を何度か繰り返す
7)水洗いをし、さらに漬け込みを行う
8)酢酸液等で定着をさせることもある
9)水洗いをしてから乾燥させて出来上がり
藍染の文化は世界各国で見ることができますが、発酵をさせて「すくも」を作るのは日本独自の染色方法です。植物の抽出液や煮出し液を使うわけではなく、「すくも」を可溶性に変性させてから染める方式であるため、植物原料とは言っても一般的な「草木染め」とは別物と考えられます。
藍染の特徴
藍染めの主な特徴も知っておきましょう。
生産地が多い
藍染は日本全国に広がった染色方式です。そのため現在では藍屋の数は少ないものの、岡山・宮崎等、日本の各所で藍染製品の生産を見ることができます。そのため、「藍染だからこの地方の製品」といった染め方だけでの生産地特定の仕方は、一般の方には少々難しいでしょう。
藍染に加えて「紬(つむぎ)」「絣(かすり)」といった織り方等で生産地を特定する必要があります。
綿製品・浴衣が多い
古来には「麻(麻糸、麻布)」への染めが多かった藍染ですが、江戸時代以降に綿の生産が安定したことで「綿(木綿)」に染めを行うことが増え、一般的となりました。現在でも藍染は木綿製品との相性がもっとも良いと言われています。
着物の場合でも、藍染は木綿の製品(木綿着物)が多いのが特徴。この他、浴衣(ゆかた)等の部屋着に類する衣類、作務衣(さむえ)等の作業着等にも藍染は多く用いられます。
水洗いを繰り返すことで深みが増す
藍染をした繊維はとても丈夫で、綿製品の場合には水洗いをすることもできます。合成染料の多いジーンズ等のインディゴ染の場合だと「色落ち」がありますが、天然の蓼藍を使った藍染の場合にはほとんど色落ち・色抜けもありません。水洗いを繰り返すことで、かえって色に深みや優しさが出てくるのが特徴です。
藍染着物を売る場合の注意点
着物買取業者等に藍染めの着物・藍製品を売る場合の注意点には、どのようなものがあるのでしょうか。
買取OKは基本的に伝統工芸品のみ?
前述のとおり、藍染めの着物はほとんどが「木綿製品(木綿着物)」となります。一般的な木綿着物は「普段着」の扱いとなるため、買取をしている業者はほとんどありません。着物買取業者が取り扱うのは、多くが「正絹(シルク)」で作られた着物なのです。
ただ、以下のような「有名な織物」「伝統工芸品」「作家製品」等の場合には、藍染めの木綿着物でも高額買取が行われています。
【高額買取製品例】
・大島紬(おおしまつむぎ)
・久留米絣(くるめがすり)
・琉球絣(りゅうきゅうがすり)
・しじら織り 等
なお上記のような伝統工芸品や作家製品による藍染着物を売る場合には、製品の品質を保証する「証紙」「証明書」があるかどうかが高額買取のカギとなります。着物とは別に証紙を保管をしている場合もありますので、ご遺品等の場合にはよく確認しましょう。
浴衣・作務衣は買取NG
藍染め製品の代表格とも言えるのが「浴衣(ゆかた)」。老舗の呉服店等でも、藍染めの浴衣は人気です。しかし浴衣については、高級呉服店の製品や百貨店製品等であっても、買取をしてくれるところはほとんどありません。
着物に馴染みが無い方の場合、形が同じなので「浴衣も着物と同じ」と思われる方が多いのですが、浴衣は下着や部屋着の扱いとなります。また作務衣や甚平等の作業着・部屋着も、和装専門の買取業者では基本的に買取を行いません。
特に宅配型の着物買取業者の場合、買取NGの製品が荷物に入っていると「一箱まるごと買取できない」と返品されてしまう可能性もあります。買取業者の買取可能な製品をしっかりと確認することが大切です。
おわりに
藍染着物の特徴や注意点はいかがでしたか?丈夫で使いやすい藍染めの衣類は、一枚買うと長くお付き合いができる逸品です。近年では日本の伝統的な藍染め製法で作られたスカーフやTシャツ、洋服類等も登場しています。「使っては水洗いをして、色の変化を楽しむ」--藍染め製品を育てるという経験を、和装だけではなく洋装でも楽しんでみるのも良いですね。