着物産地

上布(じょうふ)

上布とは何?会津上布・越後上布の違いや上布着物を売る時のポイント

着物には様々な織物が使われますが、有名な種類のひとつに「上布(じょうふ)」が挙げられます。「上布」は麻で織られた反物や着物をあらわす言葉で、非常に古い時代から日本の衣類文化を支えてきました。

現在でも各地の伝統工芸品として「上布」は作られています。会津上布・越後上布・近江上布・宮古上布等、
その種類は様々。いずれも希少価値のある高級品であり、着物買取の場合にも比較的高値を期待できる種類と言えるでしょう。今回はこの「上布」について、その歴史や特徴、買取に出す場合の注意点等を詳しく解説していきます。

そもそも上布とは何?

カラムシ出典:Wikipedia カラムシ

「上布」とは、麻(麻糸)を使用した高級な織物(平織り)のことを指します。麻の織物にはキャンバス地のような硬いもの、ゴワゴワしたものもありますが、上布の場合には麻糸の中でも細い糸が使用されており、その手触りは繊細です。

洋服の素材に使われる麻が「亜麻(あま)/リネン」を用いるのに対し、和服のための「上布」には、多くが「苧麻(からむし)/ラミー」という種類の原料を使用します。からむし(ラミー)は絹のような光沢感があり、薄くても丈夫であるのも特徴です。

上布の歴史

上布の歴史は非常に古いものです。紀元前100年頃、崇神天皇の時代にはすでに上布の源となる「真麻」を使った織物が作られていたと言われています。天皇の皇女やお使えしていた官女等が各地に散ったことで織物の技術が日本各地に伝わり、様々な土地で上質な麻布が織られるようになりました。

養蚕(ようさん:絹の原料となるカイコの飼育)が定着するまでは、日本での織物は基本的に「麻」のみ。その中で上質であった細い麻糸で作られる平織り布は、当時の高級品でした。「上等な布」ということで「上布」と呼ばれるようになったのです。奈良時代に作られた「正倉院」には、当時の最高級品として作られ献上された「越後上布」が今も保管されています。

江戸時代に入り絹の生産が安定しても、涼しく着やすい「上布」は夏用の小袖等に重宝されてきました。各藩で培われた上布の織り方の技術は現代にも伝えられ、「会津上布」「越後上布」等の伝統工芸品として珍重されています。

様々な上布の種類と特徴

生産地や種類が多いのも「上布」の特徴です。代表的な種類についてご紹介していきます。

越後上布(えちごじょうふ)、小千谷ちぢみ

越後地方(新潟県南魚沼・小千谷)を中心に発展した伝統工芸品です。厳密に言うと平織りタイプのものが「越後上布」で、縮織タイプのものは「小千谷ちぢみ」と呼ばれて区別されています。重要無形文化財であることはいずれも同じです。

降り積もった雪の上に反物を広げる「雪晒し(ゆきさらし)」という工程があるのが、いかにも雪国・越後らしいですね。越後上布には白地が多く、縞柄や絵羽模様等があります。

会津上布(あいづじょうふ)・会津からむし織り

上でご紹介した「越後上布」に長年使われてきた原料・苧麻の生産地が、福島県・会津。そこで作られ始めた麻の平織物が、「会津上布」です。織り始められたのは30年~40年ほど前なので、比較的新しい工芸品と言えます。

数年前までは「会津上布」と呼ばれていましたが、現在では「会津からむし織り」という呼ばれ方が一般的となっています。からむし織りは絣柄を手で括り、手織りにするのが特徴です。白地ベースの越後上布に対し、会津上布には色地も多いほか、柄行にもモダンなものも多く見られます。

宮古上布(みやこじょうふ)

沖縄・宮古島で作られる上布です。15世紀頃には既に製法が確立していたと言われています。東の越後上布にならぶ「西の高級品」として、昔から珍重されてきました。

深い紺色、もしくは白色の絣で作られているのが特徴。とても軽くて薄いのに丈夫であるため、主に真夏用の着物として用いられます。製作者である伝統工芸士が少なく、年間生産反数約20反という貴重さで知られています。現代風に言うと「レアな着物」なのです。

近江上布(おうみじょうふ)

滋賀県愛知郡愛知川町を中心に生産される上布です。鎌倉時代に都の職人が近江に移り住み、機織りの技術を伝導したと言われています。

伝統工芸品として指定されている製品は、昔ながらの苧麻もしくは手紡ぎ大麻を使用することが定められています。細かな絣模様と縮みの仕上げが独自の風合いを出しており人気です。

なおこの地方では伝統工芸品以外の麻織布も多く生産しているのも特徴です。指定伝統工芸品以外のものは、明治時代からは亜麻(リネン)、大正頃からは輸入のラミー糸を使用しています。

能登上布(のとじょうふ)

石川県羽咋市で生産される伝統工芸品です。「能登縮(のとちぢみ)」とも呼ばれます。

上で紹介した「近江上布」の原料の生産地であったのが能登。そこに職工を招き、江戸時代初め頃に製法が確立しました。櫛推し捺染・ロール捺染と言われる独特の絣染めの技法が用いられるのが特徴です。素朴な色合いも人気の理由となっています。

石川県指定無形文化財ですが、現在では織元(製作企業)が一軒のみとなっており、その希少さが高まっています。

八重山上布(やえやまじょうふ)

沖縄県石垣島等の八重山諸島で作られる上布です。沖縄の伝統的な「琉球絣(りゅうきゅうかすり)」の図柄を使うのが特徴。「ちょま」と呼ばれる苧麻を手紡ぎし、天然植物染料で染めるため、ひとつひとつの風合いが微妙に異なるのも魅力です。

一般的な植物染料による染め物は日焼けで色あせしますが、八重山上布は「日に当たるほど色が濃くなる」とも言われています。日光への強さ、涼しさによって夏着物として重宝されている織物です。

上布を買取に出す場合の注意点

必ず着物専門の業者で見積もりを

上布は一般的に「夏のおしゃれ着」に用いられることの多い織物です。「留袖」「振り袖」のような礼服ではないため、着物の知識がない業者ですと普段着扱いで安い価格で買い叩かれたり、あるいは「買取できない」と言われる可能性があります。

伝統工芸品の上布については、「きもの鑑定士」等の専門家が在籍する着物専門の買取業者に売った方が良いと言えるでしょう。

伝統工芸品の「証紙」を忘れずに

「特定の地方で購入したから」というだけでは、伝統工芸品である証にはなりません。例えば越後上布の場合、伝統工芸品は「国産の苧麻を使用・伝統技法を使用」という指定があります。同じ地方で作られていても、輸入ラミー糸を使った製品は「伝統工芸品」という判定は受けられないのです。

高額買取をして欲しい場合には、伝統技法で制作されたことを示す「証紙」を一緒に提出するようにしましょう。証紙が有るか無いかで、上布の買取相場は大きく変わってきます。

おわりに

越後上布・宮古上布等の「上布」の特徴や歴史はいかがでしたか?上布は各地での生産者が激減しており、今後ますます貴重な品となると予想されています。製品によっては高額買取してもらえる可能性が高い着物です。売りに出す場合には、見る目がある業者をキチンと選びましょう。

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