お手入れハウツー

着物の衿汚れ

着物の衿汚れの落とし方・3つのケースを徹底解説

着物のシミ・汚れの中でも、意外に目立ちやすいのが衿(えり)の汚れです。着用後の着物の衿のお手入れをサボっていると、人からも「汚れてる…」「みっともない」と思われるような状態になってしまうことも。「汚れたかも」と気づいたら、正しい着物の衿汚れの落とし方で、早めにケアをしておきたいですね。

着物の衿汚れを落とす時には、汚れの原因に合わせた対処をすることが大切です。状態によっては自分でで着物の衿汚れを落とせないこともあるので、正しい見極めをすることも重要となります。ここでは衿の汚れの原因や状態を3つのケースも分類して、着物の衿汚れの落とし方を詳しく解説していきます。

1.着物の衿汚れの原因がファンデーションの場合は?

ファンデーション
着物の衿汚れの落とし方の作業に入る前に、まずは衿の状態をしっかりチェックしましょう。

【チェックリスト】
・濃い色の着物の衿元が白っぽくなっている
・白い色の着物の衿が肌色っぽくなっている
・折った衿の端の部分だけに、横線のように汚れが付いている
・衿の前側(顔がある方)の両ワキが特に汚れている

上のチェックリストで「YES」が多い場合、着物の衿汚れの原因は「ベースメイク(ファンデーションやBBクリーム)」である可能性が高いです。着物の衿は洋服よりも高く作られているため、ちょっと下を向いただけでも衿にお化粧の汚れが付いてしまいやすいんですね。

ファンデーションの汚れは、合成シリコンオイル等の油分を多く含む油溶性の汚れ。水では落としにくいのですが、油に対しては溶けやすいのが特徴です。

そこで原因がファンデーションの場合、着物の衿汚れの落とし方では「ベンジン」という揮発油の一種を使います。ベンジンは油剤なのですが、揮発性が高いので時間が経てば空気の中に成分が飛び散り、着物に油分が残りません。薬局やドラッグストア等で数百円で買える手軽さも魅力です。

ベンジンを使った着物の衿汚れの落とし方

【準備するもの】
・ベンジン(クリーニング用のもの。カイロ用はNG)
・タオル(色が薄く、汚れて捨てても良いもの)
・ガーゼまたは薄手のタオル

1)汚れとりに入る前に、後述する「色落ちテスト」を行っておきます。
2)タオルを敷いて、上に着物の衿の汚れがある部分を広げます。
3)ガーゼにベンジンを適量染み込ませて、汚れの部分を軽く叩きます。
3)タオル・ガーゼに汚れが落ちていきます。常にタオルやガーゼの位置を動かしながら、きれいな面で汚れを吸い取るようにします。
4)衿の汚れが落ちたら、別のガーゼに多めにベンジンを染み込ませて、衿の広い範囲にベンジンをふくませ、ぼかします。色ムラ(輪ジミ)が目立ってしまわないように、衿との境目の部分にまでぼかしこむようにしましょう。
5)着物用のハンガーに着物をかけて、着物を十分に乾かしてベンジンの成分を飛ばします。

※ベンジンを使うと、繊維によっては色落ちします。必ず目立たない場所で色落ちテストを行ってから、衿の汚れ落としの作業に入ってください。
※強くこすると毛羽立ち・色ハゲの原因になるので、やさしく叩くようにしましょう。
※作業中は窓を開けて、換気扇もまわしてください。密閉した空間で作業をするのは厳禁です。
※作業中は火気厳禁です。ライターや調理器具等も使用を中止する他、電気ストーブ等の暖房器具も止めておきましょう。
※ベンジンの「ぼかし」に失敗すると輪ジミができてしまいます。いきなり振袖や留袖等のフォーマル向け着物でベンジンを使用せず、普段着着物等で練習をしておくことをおすすめします。

2.着物の衿汚れの原因が汗・皮脂の場合は?

着物の衿汚れの原因が汗
着物の衿の汚れの原因はメイクやファンデーションだけとは限りません。

【チェックリスト】
・帰宅後、衿元の他、ワキ・背中等が湿っている
・夏の暑い時に着物を着た
・暖房の効いた室内で着物を着た
・数回以上は同じ着物を着用したが、クリーニングはしていない

上記のような場合、着物の衿には「皮脂」と「汗」がかなり付いている可能性があります。衿の汗汚れは、水分をメインにカルシウムや塩分等のミネラルを含んだ汚れです。皮脂という油溶性の成分と、汗という水溶性の成分が混じっているため、水性・油性両方の衿の汚れ落としをする必要があります。

汗・皮脂による着物の衿汚れの落とし方

【準備するもの】
・タオル(汚れても良いもの)2~3枚
・大きめのバスタオル(汚れても良いもの)
・着物専用のハンガー

1)バスタオルを敷いて、その上に着物を広げます。
2)タオルをぬるま湯で濡らし、硬く絞ります。
3)衿の汚れた部分を、2)の濡れタオルでトントンと軽く叩いていきます。
4)常にタオルのキレイな部分が着物に当たるように、タオルの位置を動かします。
5)別の乾いたタオルで、同じように衿を軽く叩き、水分を吸い取っていきます。
6)衿に含まれた汗が多い場合には、2)~5)を数回繰り返します。
7)着物専用のハンガーにかけて陰干しし、水分を十分に飛ばします。
8) 1.で解説したベンジンを使った衿汚れの落とし方を行い、皮脂汚れも落とします。

※タオルは十分に硬く絞るようにしましょう。着物を濡らしすぎると、縮みや水シミ等の原因になります。
※着物を干す時には、直射日光に当てないように十分にご注意ください。褪色の原因になります。

3.着物の衿汚れが変色している場合は?

1.と2.で解説した着物の衿汚れの落とし方は、いずれも汚れが付いてから間もない状態のシミ抜き・汗抜きの方法です。汚れが付いてから時間が経過してしまうと、繊維に残った成分が酸化して、シミの状態が徐々に変化していきます。

【チェックリスト】
・着物の衿の汚れが黒っぽくなっている
・縦スジのような汚れがある
・汚れを付けたのがいつかわからない(最近ではない)

着物の衿が上記のような場合、皮脂汚れの酸化が進んでガンコなシミになっている状態です。残念ながら、黒っぽい汚れになってしまった着物の衿汚れは自宅では落とすことができません。早めに着物クリーニング店に持ち込み、シミ抜きを依頼しましょう。

【チェックリスト】
・着物の衿汚れが黄色・オレンジ色・茶色に変色している
・汚れが付いてから年単位で放置している
・汚れた部分の色が変わっている(紺や黒色が薄いピンクに、等)

上のチェックリストに「YES」が多い場合、汚れの酸化がさらに進んで、着物の生地自体が「黄変(おうへん)」という化学変化を起こしている可能性が高いです。この場合、一般的なシミ抜きや着物丸洗いクリーニングだけでは着物を元に戻すことができません。

職人による漂白作業を行った上で、さらに「色掛け」等の染色補正作業を行う必要があります。染色補正等を含めた専門的な対処ができる悉皆屋(しっかいや)や着物クリーニング専門店に相談をしましょう。

おわりに

ワイシャツ等の襟汚れの場合には、自宅でも比較的強い漂白剤を使って汚れを落とすことができますよね。しかし着物の場合、正絹(シルク)やウールといったデリケートな素材で作られている他、染料にも自然素材等の変色しやすいものが使われていることが多いもの。

そのため自宅での着物の衿汚れの落とし方では、強い洗剤や漂白剤類は使うことができません。漂白剤で着物を傷めてしまう可能性の方が高いからです。

着物の衿の汚れ対策は、ベンジンや汗抜きで対処ができるうちに早め早めに行うクセをつけましょう。

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